100年就業規則 グッドデザイン賞受賞の詳細

 

●背景
株式会社ヴィマイルの社長(故山下洋祐氏)は人財活用や組織作りに優れていた。彼のノウハウは先代社長から言動で受け継がれたものであった。同氏は癌と診断され、医師から余命を宣告される。そんなとき、同氏の20歳の長男から「自分も社長になりたい」と伝えられる。それから1年間の闘病生活の間に社会保険労務士と共に、次代に継承したい経営ノウハウや哲学を言語化し、就業規則の形でまとめていった。完成した就業規則を手に取った時の同氏の涙が忘れられない。近年、労働局に持ち込まれる相談は年間100万件を超え、ブラック企業という言葉が流行語となるように若手の企業に対する不信感は大きい。そんな中、社長や社員が代わっても、労使紛争などとは縁がなく良好な労使関係を続ける優良企業がある。そんな関係を生み出している施策や考え方を言語化して、社内のリーダーや次世代の経営者に伝えることで、優良企業を増やし、次世代に繋げたいと考えた。

 

●経緯とその成果
末期癌で余命を宣告された株式会社ヴィマイルの二代目経営者(故山下洋祐氏)が、三代目、四代目に向けて、組織作りや労使関係の築き方を伝えたいと考えた。同社は女性社員の主体的な働き方が注目されていた会社であった。社会保険労務士がその組織作りや労使関係の築き方の要諦を病室で質問していく中で、その主体的な働き方は、偶発的に起こっているものではなく、必然的に起こっているものであることに気付いた。さらにそれらは先代から継承され、当代で発展させていっているものだということも分かってくる。そのノウハウや哲学をモレなく体系立ててまとめるために、就業規則の条文ごとに、その項目に対する考え方やそれに基づく取り組みをまとめていった。無機質な条文の背景にある願いや想いを言語化して載せることで、目には見えない会社の風土や経営者の考え方を、次代に継承することができるようになった。

 

●仕様
会社の就業規則(50~100ページ程度)。見開き左側のページに条文(具体的なルール・施策)を記述し、右側にその施策の制定背景、想い、運用の勘所を記述している。優良な長寿企業の暗黙知として伝承されるノウハウを言語化し、経営における施策ごとに、体系的に整理したもの。事業承継者や次代の社員に共有することで、優れた経営哲学を確実に承継し、また東洋的経営手法を広く世界に共有することが可能となる。

 

●審査委員の評価
世界を刺激できるコンテンツではないかと思う。さらにこれを世界に届けるためにデザインやコミュニケーションを強化し、過去から未来、日本から世界をより優しくデザインしていくことができるだろう。まずは、誰もが手に取りたいと感じるようにどうできるかが鍵である。

  • 01 企業経営者 人事総務担当者の方
  • 02 医療機関・福祉施設の方
  • 03 社会保険労務士の方
  • 一般企業の方
  • 社会保険労務士の方